6月の法話 恋の季節/詠裡庵
日が長くなりました。暖かくなり、田や池にカエルの合唱隊が集まって日々練習している声が聞こえてきます。これはカエルが恋の歌を歌っているのですね。
カエルの歌が聞こえてくるよ、ガッガッガッガ、
ゲロゲロゲロゲロガッガッガ
その歌がいつまでもいつまでも、続きます。
しばらくそんな日が続いた後、私たちが目にするのは、ソフトボール大の白い泡状になった球体です。これはモリアオガエルの卵です。水辺に生えている木の枝などにぶら下がるようにくっついているのですぐ判ります。あの歌っていたカエルたちの恋が成就したのでしょう。
ふ化してオタマジャクシになったとき、泡のボールから出て、そのまま水の中に落ちていきます。そのため卵は、ちゃんと計算の上で水の上に産み付けられているのです。
境内の一角の小さな池にこんなにたくさんの卵が!と驚くほどの数です。
何日かして池のそばにいくと……泳いでいました、生まれ出てきたばかりの小さなオタマジャクシが。いったいひとつのボールから何匹出てくるのか、たくさん泳いでいます。
二三日して池をのぞくとずいぶん大きくなっています。ただ、数は減っているようです。池の中には、鯉やイモリなどもいて、その餌になってしまうのでしょう。何とか逃げて、生き延びておくれと、池の外から願うばかりです。
モリアオガエルなどカエルたちは自分自身ではそうひろい範囲を動き回ることはなく、池の周りで育ったカエルはまたその池に帰るそうだと聞きました。だから餌にならないよう上手に逃げて次の年も卵を産み付けて欲しいと思います。
紅葉の木に産み付けられた卵と、オタマジャクシと生まれて日の浅いカエル。数多い外敵にもめげずに成長し、生命を次の世代につないでいるのです。当たり前の自然の営みかもしれませんが、池の外から成長を応援したくなります。