6月の法話 宗祖御降誕800年/日 慧

 日蓮聖人は承久4年(1222)千葉県安房小湊に誕生されました。

 のち清澄山で出家され、当時の最高学府であった比叡山に学び仏教各宗の教えを究めて、法華経こそが仏の真実無二の教えであるとの確信を持たれました。以後その法華経の教えを説き広め、仏の慈悲の手に包まれた理想の社会実現のために、生涯を尽くされたのです。

 法華経の詩人、宮澤賢治はその精神を自身の生き方として生きた人でした。彼の「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人に幸福はありえない」という言葉は、その生き方を端的に表したものであり、これはそのまま法華経の心、日蓮聖人の説かれるところを示すものでもあります。

 ともすれば私たちは、目先の利、殊に自分自身にとっての損得勘定に流されがちです。それがさらに顕著になっているというのが、最近の世の風潮ではないでしょうか。これが結果としては、互いが我を張る住みにくい世の中となり、民族の紛争、国と国の戦争にまで進んでいくのです。

 政治の世界でもまた経済状況を見ても、先行きの不安が増大する中で、今ほど日蓮聖人の説かれる理想の社会実現のための努力が必要と感じられる時代はないと思います。

 平成33年2月16日は日蓮上人がお生まれになって満800年の記念すべき日です。この日を目標に、世界全体の幸福実現を目指して進もうというのが、今日蓮宗で取り組んでいる運動です。

 その一貫として、当山では宗祖日蓮上人御降誕800年を記念して、まず参拝される皆さまに親しみを感じ、安らぎを味わってもらえる寺域境内にしようという方針を立てて、境内・周辺山林の整備を計画、少しずつではありますが実行に移しております。ご来山の時に、気がつけば境内の様子が何となく変わってきたなと感じていただき、日蓮聖人がお生まれになった800年前を偲んでいただければ幸いです。