5月の法話 『ホーホケキョ』/詠裡庵
暖かくなって、山ではウグイスののど自慢が盛んに行われています。
周囲を山に囲まれた能勢にいると、この鳴き声は心を和ませてくれます。
ある日、二羽のウグイスが庭に降りてきて、エサをついばんでいました。
二羽はどちらも地面をクチバシでつついて餌を探しているようです。
そして顔を上げると、どちらも何か餌を口にして、お互いに見つめ合っていました。
それを何度か繰り返した後、やがて飛び去り、近くの木に止まって鳴き出しました。
「ホーホケキョ」
澄んだきれいな声でしたから、ラブコールだったかも知れませんね。
コロナ禍の今、食事中はしゃべらないよう静かに食べて、食べ終わってからマスクをつけて歓談しましょうと言われています。
ウグイスたちも食べながら声を出すのは控えていたのでしょうか。
私が子供の頃は、家でも学校でも、静かに食べなさい、と言われたものです。
ところが三十年経って次の世代になると、給食時間は同じなのに、会話しながら食べましょうと指導されるようになりました。
こころ楽しく食べて栄養もしっかり身につけるようにと、家でも学校でも習慣が変わってきたようです。
それが、今は静かに食べなくてはならないとは。
コロナ禍が収まるまでのしばらくの間とは思うものの、大人にとっても子供にとっても大きな変化を強いられる厳しい現状です。
ウグイスは一年中日本に住んでいる鳥です。
寒い冬は鳴き声を出さずに、風の当たりにくい草の中にいます。
カーテンを開け閉めする音や廊下を歩く音などがすると、一斉に飛び去って見えなくなります。
暖かくなり、梅の花が咲く頃になると、「チッ、チッ、チッ、チッ」という声を聞くことができます。
あの二羽のウグイスもこの近くで生まれ育ったのでしょう。
ウグイスたちと一緒にコロナ禍の収束を願って、「ホーホケキョ」「妙法華経」と祈る毎日です。