10月の法話 「私たちは釈尊の愛子」/相川大輔

最近よく目にするのは、「誰それがこんな事をした、あんな事を言った、けしからん」といった、ネット社会の産物といえる、いわゆる「炎上ニュース」だ。

確かに、いじめ問題の告発等、炎上ニュースが問題解決に有効に働くケースもあると思われるが、ほとんどの炎上は「憂さ晴らし」の部類だと思われる。

この憂さ晴らしに関して興味深い言葉がある。「シャーデンフロイデ」だ。

この言葉は「害」と「喜び」をつなげたドイツ語である。日本語では「他人の不幸は蜜の味」と表せる。

 

ザ・シンプソンズというテレビアニメの中で、主人公のホーマーが裕福で賢い家族たちと幸福そうに暮らす隣人のネッドが新たな商売を始めた際、上手くいっていない様子を知り「店、ガラガラだよ」と嬉々として家族に話す。

これを聞いた娘のリサはホーマーに「シャーデンフロイデって知ってる?」

「ドイツ語で恥知らずな喜び、人の不幸を喜ぶことをいうの」とホーマーを批判する場面がある。

そう、シャーデンフロイデは私たちが頻繁に経験する心理であり私たちはこの蜜が大好物なのだ。

心理学によれば、人は自己を他者と比べた結果、羨みや妬みを感じて自己肯定感が下がると、自分が蔑むことができる対象を見つけて自己肯定感を満たし心のバランスを本能的に取るのだそうだ。

 

仏教では、自己と他者を比べることを「慢(まん)」といい、煩悩の一つであるとされる。自分を高くみるのが増上慢、低くみるのが卑下慢である。

「慢」は根源的な煩悩なので、自分で気づき反省することが難しい。しかし読者の皆さん、ご心配なく。なぜならばお題目があるからだ。

私たちはみな釈尊の愛子であり、一人ひとりかけがえのない存在である。比べる必要はないのだ。

甘い蜜ばかり口にしてるなと感じたらお題目という妙薬をいただこう。

色も香りもよい美味なるお題目をいただけば、密の甘さなどは吹っ飛ぶはずである。