6月の法話 星の光が見守っている/桑木 信弘

お寺の周囲に広がる棚田にも水が引かれて田植えの季節となりました。

周りの山の木々も緑で彩られ小鳥は囀ずり水田には空の青さと白い雲が映し出され、夜空を見上げると冬の間大きく輝いていたオリオン座は目立たなくなり、やはり北斗七星が北極星と共に存在感を増してきます。

夜空に見える星は、肉眼で見えるだけでも三千から五千個あるといわれ、私達の銀河だけでも二千億個の星があるそうです。

私達から見上げたときにちょうど動かず中心に座しているのが北極星で、まるで周りの多くの星たちを従えているようです。

それ故、北極星のエネルギーとして鎮座されている妙見大菩薩は天帝の王、菩薩の中の菩薩といわれます。

昭和六十年、人気絶頂の中、御巣鷹で悲運にみまわれ五二〇人ともども犠牲になった坂本九さん、その九さんの星が夜空にあるそうです。

平成五年にアマチュア天文家により火星と木星の間に発見、九さんの名が付けられました。

九さんの名曲「上を向いて歩こう」では、上を向いて歩こう涙がこぼれないように、にじんだ星を数えて、幸せは雲の上に、とうたわれ、辛く悲しくても涙がこぼれないように空を見上げ、今は幸せに手が届かなくとも、目線の先に必ず幸せはあると信じて歩き続ける姿が伝わってきます。

私達の人生には時として暗雲が立ち込め、悶々とした中で行く末を占うしかない不安が伴います。

仏教の修行には禅定と智慧が大切と説かれ、波立つ心を静かに落ち着け平常心を持ち自身の内面や周囲と向き合う時、多くの生命に支え生かされる事の信頼に目覚め、決して独りではない事に気付きます。

九さんはうたいます。

「見上げてごらん夜の星を小さな星の小さな光がささやかな幸せをうたってる」

私達それぞれの胸の内も願いも、九さんの歌の如くすべて見守っている星の神、妙見大菩薩に身と心を委ねて生き甲斐ある人生の華を咲かせましょう。