コラム 投機(とうき)

 辞典には、相場の変動によって生じる差益を得るために行う取引と説明があるとおり、現代では経済用として使われているが、もとは仏教用語で、機とは仏道修行をなし得る精神的な能力、また心の力や性質をいうもので、教えを説く師匠の機と教えを受ける弟子の機が相投じて冥合すること、つまりお互いの心が相通じて合致し投合することを意味する言葉である。

 機は人によって違いがあるのは当然で、しかも心というものは見ることもできず、捉えどころのないものである。教えを投げかける師匠とこれを受け止める弟子の、その心と心が絶妙のタイミングでぴったり息を合わせることを投機という。

 師と弟子の真剣勝負の世界と言えよう。

 経済の先行き不安定な今、経済用語の投機もまさに真剣勝負というべきであろうか。