コラム 貪著(とんじゃく)

 「広辞苑」に貪着を、足ることを知らず物に執(しゆう)着(じやく)すること。むさぼりつくこととある。

 人間の欲望にはキリがない。満足することを知らず貪り求めることを仏教では貪(とん)欲(よく)というが、一般には「どんよく」と読む。またむさぼり求めて執着することを貪著といい頓(とん)着(じやく)とも書く。

 貪欲は人間の根源的な三つの煩悩(三毒)の一つで、心をかき乱し悟りを妨げる原因とされている。この貪欲のない心の状態を無貪著というが、これも俗に無頓着と書き、物事を気にしない状態を表す言葉になっている。また貪欲が強く狂気じみるのが貪狂(とんきよう)。一般には頓狂と書き調子っぱずれなことをいう。

 法華経の譬喩品に「諸苦の所因は、貪欲これ本なり」と説く。呉々も欲が過ぎて物狂いにならぬよう心掛けたい。