コラム 無垢(むく)

 若い夫婦の門出を祝うのは、当人でなくても心改まるものだ。結婚式の花嫁というと「白無垢」の姿が思い浮かぶ。神聖な儀式などでは、古来から身も心も汚れていない証(あかし)として、表裏すべて白い無地の布で仕立てた着物を着た。

 無垢というのは、仏教では煩悩のない清浄なことをいう。垢とは煩(ぼん)悩(のう)のことで、仏教の究極の目的である悟りを妨げ、つまり心身の働きを妨げ悩ませて人間を苦楽の世界に縛り付ける、あらゆる精神作用を指している。釈尊はこの悪い作用を除き人々を悟りに導くために教えを説かれた。後世になると煩悩を分類し、除夜の鐘にみられる百八煩悩説などが説かれる。

 無垢であることは難しいが、日々の垢を少しでも洗い落として過ごしていきたい。