5月の法話 「キレル心」と向き合う/倉橋観隆


 先日「キレル現代人」という題の医学雑誌を目にしました。それには若者に限らずキレル年齢層は高齢者にも広がり、その増加率は若者を上回っているとのこと。怒りをぶつけ易い店員や看護師、駅員等に暴言暴力を加えてしまうのです。

 これら感情の抑制がきかなくなる原因の一つに、感情や理性、行動等をコントロールする大脳前頭葉の加齢による萎縮を指摘しています。更には脳内の神経伝達物質が減少することも要因として上げています。これらの結果自己を客観視できなくなり粗暴な行動に出てしまうというのです。

 このような脳の老化を予防するには動物性タンパク質の補給が必要で、高齢になると敬遠しがちになる肉類を心がけて摂取することを説いていました。

 しかし、ここでこの記事の注目すべきは食生活と併せてメンタルトレーニングの一例を述べた点です。

 まず日記を書く習慣をつける。怒ったり、イライラしたことをそのまま書く。すると不思議と怒りが冷めて自己を客観視できるようになり、自分の側の反省点も見えてくる。更に一歩進めて、マスコミで騒がれている犯罪者等を自分が弁護する立場になったらどうするか、と考えるのも客観化に有効とのことでした。

 実はここにこそ宗教の出番があるのです。かっとなったら「一、二、三」と数えて待つ心。そして、視点を変えて相手を見る心。これらは法華経の説く「忍辱の心」。更には物事をあるがままに見よという「諸法実相」の教えにもつながっているのです。この法華経の教えを七文字のエキスに集約したのが「南無妙法蓮華経」のお題目です。

 このお題目には私達自らを苦しめる怒り・貪り・愚痴の心を一切包み込んで下さる包容力があるのです。そのお題目を口に心に常に唱え続けることで自分でも思いもよらない客観的視点がもたらされるのです。キレル愚かな「私」に気づかせて下さる時が必ず訪れます。まずは試して下さい。この話が本当かどうかを!