5月の法話 ハチドリの物語/館英惟

ブナ林の新緑が美しい五月の妙見山です。見事に茂るこれらの大木は、大阪府の天然記念物です。

でも大木も、最初は小さな種でした。やがて芽を出し、長い年月を経て年輪を一本また一本と増やしながら成長してきたのです。昨日と今日で、目に見えて大きく成長するようなものではありません。気の遠くなるような毎日の繰り返しだったことでしょう。

私たちは目先のことに目を奪われがちです。でもそれでは成長できないということを、ブナが教えてくれているような気がします。

最近「ハチドリの物語」を読みました。たくさんの動物が住む森が火に包まれます。その火を小さなハチドリが小さなくちばしに一滴の水をたくわえ火の上に落として消そうとします。それを見て、火から逃れようとしていた他の動物達は「そんなことをして何になるの?火は消えないよ」と笑います。でもハチドリは「私にできることをしているだけ」と答え水を運ぶために飛び続けるという、わずか十七行の物語です。

火を消すことができるかどうか、考えるよりもまず自分のできることをやってみようというハチドリの思い。そして他人から笑われようとも諦めず、黙々と続けていく強い精神力。この物語からそういったことを学び、自分もできることをやってみようと取り組む人が増えているそうです。

信仰の世界もこれと同じだと私は思います。日蓮大聖人という方は、万人が幸せを得ることのできる世界を実現しようと、ご自身の生命をかけて尽くされました。でもそんなすごい御生涯も、実は一日一日の積み重ねで成ったものです。大聖人は「火のような信仰あり、水のような信仰あり」と示されています。パッと燃えてお仕舞いではなく、細くてもとぎれることなく続く水の流れのような信仰こそが、事を成就するというのです。日々怠ることなく、皆さんの心の中にある仏の種を、妙見山のブナのように立派な大木に育て上げる努力を続けて下さい。