2月の法話 今年も変わらぬ精進を /桑木信弘

また新しい一年が始まりました。昨年は、お経を沢山読むことを目標にしました。法華経は八巻二十八品であり、六万九千余りの文字数です。

日蓮宗はかつて他の宗派から読経宗といわれる程に、お経を読む事を重んじました。

普段はつい読み慣れた部分ばかりをスラスラと読んでしまいますが、八巻すべてを読みますと言い回し、発音の難しいポイントがあったり、経典の圧倒的な長さと多さに嫌気がさすことも正直あったりするものです。

昔のお坊さんには八巻の法華経をスピーディーに一日三回も唱えて修行なさった方々もいたようです。 

昨年の年明けから、朝晩にゆっくりと読みすすめ始めて、秋も深まる頃には朝晩で一巻と半分くらい、八巻すべてを五日から一週間で読めるようにようやくなりました。

読むのが大変なだけに、全巻読み終えた時の達成感も凄く大きなものですが、身体いっぱいにお経の力を頂いたという実感が湧いてきます。

 

さて、私が苦手な全八巻に取り組めた背景には、同じように読経に取り組む友人が私にはおり、彼との関わりが大きな励みとなっていたのです。

法華経には五種法師(ごしゅほっし)という教えがあります。

お釈迦様の一番大切な教えを「受けて持ち続け、読誦し、皆に解かるように説き、教えを書き伝えて」心を込めて身を持って供養をする、その意味では修行もまた仏さまへの供養ですね。

自分一人だけが悟りや仏さまに向き合うのではなく、同じ志しを持つ友や檀信徒の方々と共に歩む心の触れ合いの中にこそ、言葉を超えた祈りの力に包まれた、まさに見聞触知(けんもんそくち)みな菩提に近づく道が開けてくるのではないでしょうか。

コロナ禍にあって心身不安定になりがちですが、今一度、天空から見守り下さる妙見さまや周囲の人や自然との稀有な大きな生命の繋がりに思いを馳せて、心の重荷を手放し、法華経の功徳と共にまた善き一年となりますよう御祈念申し上げます。