コラム うきよ(憂き世・浮世)

 「浮世の荒波にもまれる」などといい、この世の中、世間、あるいは人生をさして言うときに使われる。もとは「つらいこの世・無常の世」という意味で「憂(う)き世」を使っていたという。中国の古典にみる、はかない生活を意味する「浮世(ふせい)」という語に、仏教的な生活感情が混じり合って憂き世となったと考えられる。

 近世では泰平の世の中となり、ことに町人文化の台頭により、現実肯定の享楽的な風潮が出てくると、どうせはかないこの世なら楽しく生きようじゃないか、という思いから「浮世」と表すようになってきた。さらにまた当世風・現代的、また好色という意味も持つようになった。

 浮世か憂き世か。釈尊はこの世を「一切皆苦」と洞察され、苦の根源を断ち苦を乗り越えた真の法楽を説かれた。