6月の法話 『親ガチャ』 / 渋谷拓矢
近年よく親ガチャという言葉を耳にする。「親ガチャ」とは、子どもにとって親を選べないこと、つまり親がどのような家庭環境や性格を持つかは運任せであることをガチャガチャ(カプセル玩具)に例えて表現した言葉だそうだ。確かに子は親を選ぶ事は出来ないから貧富の差などがある。
だがテレビやSNSを見ると、一般的にごく普通の家庭だと思われる人でも親ガチャ失敗などと発言している人もいる。
なぜだろうと考えてみると、現代社会は周りの目を気にし、他人の評価を気にしすぎる傾向がある。自己肯定感の低さやSNSが普及した現代、容易に他の情報を知る事ができることから、自分と他人をすぐ比較してしまうようだ。それが要因で常に人より上を、高みを目指してしまっているのかもしれない。
日蓮聖人が著された『開目抄』には、「いかにいわんや仏法を学せん人、知恩報恩なかるべしや。仏弟子は必ず四恩をしって知恩報恩(を)ほうずべし」と説示されている。
四恩とは、①生んでくれた父母への恩、②すべての生きとし生けるものが互いに支え助け合い生きていけるという一切衆生の恩、③社会の秩序やインフラなど国家の保護のもとで安全に生活できる国の恩、④仏様とその教え、そして教えを伝える僧への三宝の恩。この四つの恩を知って恩に報いなければならないと日蓮聖人は仰られている。
また逆に、育児放棄や虐待などの問題がよく報じられるが、当然親も子や孫に対して恩を感じてもらえるような行動をしなければならない。
今当たり前に生活できるのは、無意識のうちに四恩で述べた恩恵を受け衣食住ができているからだ。当たり前だと思っている事ほど身近過ぎて中々その恩に気付きづらいが、その当たり前が一番の幸せだと思う。
その有り難みに気づき些細な事に対しても感謝の気持ちをもてるようになれば人生はもっとより良くなると思う。