4月の法話 伝えるためには/宮本観靖

P1000291 先日実家に帰った時の事です。子供の頃から顔なじみのおばさんに久し振りに出会いました。

 このおばさん、町内でも話が長く、止まらないことで有名な人です。私はこのおばさんの嫌味のない、気さくなおしゃべりは嫌いではないのですが、敬遠する人も多いようです。

 十年ぶりに見かけた時、町内の人とお話をされている最中でした。「相変わらず話好きみたいだなぁ」と思って見ていると、おばさんがこちらを向き、目が合ってしまいました。こうなると挨拶しないわけにはいけません。長時間を覚悟して声をかけました。

 「おばちゃん。お久し振りです。」おばさんはこちらを見て大きな声で「まああんた立派になってぇ!」と言ったかと思うと、止め処もなく話し始めました。機関銃の様に次々と話題を変え、早口で話す様子に見とれ、感心してしまいました。口下手な私としては羨ましくも思います。

 約十五分後、おばさんは「また今度ゆっくりとね」と言って最初の方とのおしゃべりを再開しました。不覚にも結論を聞き逃しましたが、おばさんはとても満足したみたいでした。

 最近テレビ等を見ていてもよく思う事は、自分のことばかり一方的に話す人が多いなぁということです。おばさんの様に嫌味がないなら良いが、自分の主張ばかり言い、相手が悪いと言わんばかりの人もいます。結果、言われた方も気分を害しケンカになることも。相手に「伝える」という事を考えず、言いたい事だけ言っても物事は解決しないものです。

 相手に「伝える」ためには「話す」ことも大事ですが、「聴く」という事も非常に重要な事です。

 じっくり話を聴けば相手の思いも伝わってきます。仏様も大聖人も御信者の悩みをよく聴き、思いを理解し、相手に一番響く言葉で教えを説かれました。
「話す事」と「聴く事」この二つが両輪となって初めて伝えたい事が伝わるのだと思います。