5月の法話 縁/倉橋観隆


 「風が吹いたら桶屋が儲かる」こんな故事を聞かれたことがありますか。

 昔のお話です。風が吹けば砂埃が目に入り、目を病む人が多くなり、中には失明する人が出てきます。すると街角に立って、三味線を弾きそれで生計を立てる人が増えてきます。そうなると三味線の需要が高まりその胴に張る為にネコの皮の需要も増えます。するとネコがたくさん捕まえられる。ネコが減って喜ぶのがネズミ。増えたネズミがあちこちの桶をかじる。桶が傷んで新しいのがよく売れる。そこで桶屋が儲かるという顛末です。

 この故事は突拍子もない話、あるいは当てにならないことを期待する例えとして使われる事もあります。しかし、元来、全く関係ないように見える事柄でも一つ一つ辿っていくと皆繋がり合っている。所謂「縁」の不思議を教えてくれる話でもあるのです。

 仏様の教えの根本はこの「縁」にあるのです。「袖すり合うも他生の縁。つまずく石も縁の端」とも言いますが、世の中偶然は何一つ無い。総て縁から生じていると説かれるのです。

 さらにその「縁」をよくよく見ると法華経『法師品(ほっしほん)』という章にはこう説かれています。
「この世に人として生まれ出たあなたたちは、自ら望んで、選んでこの時代、この家に生まれ出て来たんだよ。そして、少しでも世の中を明るくするお手伝いをして来ますと仏様と約束をして出て来たんだよ」と。更に大事なのは「一番身近な親子、夫婦、先祖は今生偶然の出会いではないよ。過去世でもやはり切っても切れない深い縁があったんだよ」ということです。

 この事実を実感として受け止めることは非常に難しいのが私たち凡夫の常でしょう。しかし「へえ、そうなんだ」と信じるか、あるいは「そんなことお経の中だけの話なんだ」と一蹴して片付けてしまうか。それはあなた次第です。

 「でもそれは信じた方が得だよ」と仰ったのが日蓮大聖人様だったのです。