6月の法話 ゴールの次へ/植田観肇


 パチリと何気なく撮った写真にこの世のものではないものが写っていたら?京都の大将軍商店街で写真を撮ると幽霊ならぬ妖怪が写ってしまうらしい。

 怪談にしては少し時期が早いが、実は商店街が観光用にアプリを開発したという話。最近、観光客を増やすために携帯のアプリを開発したという。そのアプリを使って商店街内の特定の場所で写真を撮ると、サーバーから妖怪のデジタルデータがダウンロードされ写真に重ねて表示される。撮った写真を見るとあたかも心霊写真のように見えるという仕組みだ。

 タネが分かればなんということはないが、古道具など妖怪ゆかりの物や場所で妖怪が出てくるのは好奇心をそそるし、妖怪と一緒に写真を撮るのはそれだけでも面白いのでちょっと行ってみたくなる。しかも何匹か見つけると、ついコンプリートしたい衝動にかられて一日中商店街をうろうろすることになりそうだ。この企画は妖怪に詳しくなるだけでなく、京都の魅力を知るきっかけとなる面白い取り組みだと思う。

 いきなり古典を紐解き京都を深く知りたいと思う人は少ないが、きっかけがあればそこから深い街の魅力に興味を持って、いずれ歴史や文化を極める人も出てくるかもしれない。

 実は仏教では、何百年も前にお釈迦さまが同じ事を考えておられる。一般人にとってははるかに遠いゴールにたどり着くために、身近な目標を次々に示し、少しずつ先のもっと大きな目標へ到達させようとしていらっしゃる。また時には妖怪ならぬ、幻の城を建てて人々を休め、体力と気力を回復して、大きな目標へ進むサポートをして下さっている。

 この最終のゴールとは、世界の皆が仏になり幸せな社会を築くことである。目先の利益や身近な願いを仏さまに叶えてもらったと感じたとき、同時に仏さまはその先の目標を新たに示して下さっている。あなたの次の目標は何なのか、考えてみてはどうだろう。