6月の法話 自信を持って/植田観肇
先日子供のクラシックバレエの舞台を見に行った。衣装が可愛いという安易な理由で始めたが、かれこれもう一年ほど続いている。
当日、単なる子供の発表会だと気楽な気持ちで見に行ったが、実際は、想像とだいぶ違っていた。まず子供だけでなく大人の生徒もおり、加えて生徒だけでなく先生も舞台に立ち、さらにはプロのバレエダンサーも招待し参加するなど、大変本格的な舞台であった。幕が開くと巨大なセットが登場し、子供も大人も練習の成果を精一杯発揮し、また先生を含めたプロのダンサーの踊りに、バレエを初めて見た素人の私も感動を覚えた。と同時に私の子供がこんなところで踊らせてもらっていいのかと少し申し訳ない気持ちになった。私の子もそれなりに練習はしているようだが、先生やプロダンサーまでいる中、足手まといになったのではなかろうか。
舞台が終わって後日、不安を先生に伝えたところ、意外な事を言われた。
小学生未満のベビークラスの子供たちは、技術的にはまだまだ未熟だが、公演にはなくてはならないと。まず集客の面でも子供が踊るとなると父母に祖父母に友人と大勢のお客さんが見に来る。また、ずっと大人の演技ばかり見ていると、どんなに上手くても観客が疲れてくるらしい。小さい子供が出てきて一生懸命踊る様子は、それだけで会場の雰囲気をなごませ、楽しい空気にさせる。
先生は私に気を遣ってそう言ったのかもしれない。だが私達もまた自分では気付かぬうちに誰かの役に立っているのではないか。
法華経にも登場する提婆達多はお釈迦さまに敵対する悪人の代名詞のような男で、いつもお釈迦さまの邪魔をしている。だが、実はお釈迦さまはそのおかげで悟りを開けたのだとある。提婆達多のような大悪人ですら大きな役に立っているのだから私達が誰かの役に立っていないはずはない。
お釈迦さまの教えを携え自信を持って生きていこうではありませんか。