6月の法話 道案内/末田真啓


 オーストラリアのケイ・コッティーさんは、女性ではじめてヨットでの単独無寄港世界一周を成し遂げた人物です。ところが彼女は市外図を読むのが苦手で、知らない町ではもっぱらタクシーで移動することにしています。レンタカーを使うと必ず道に迷うといいます。彼女にとって大海原の航海よりも、市街地で車を運転することのほうが難しいのです。「女性は地図を読めない」という説の格好の題材となっています。

 とはいっても、地図通りに運転するのも難しいことです。以前、あらかじめ目的地を道路マップで確認して出たのですが、山間にあるバイパス道路を走行中、直進すべきところが、前を走っている車につられて、つい「出口」の車線に入ってしまい、挙句には一般道に出ざるを得ない事態になってしまったことがあります。周りは民家も見当たらない坂道と急なカーブの連続している山間部で、車を止めて道路マップを見ることも出来ません。現在位置も判らないまま、しばらく車を走らせていると道幅が広くなったところにバス停があり、作業服姿の男性が見えました。「バイパスに戻る道」を尋ねると、書類ケースからメモ用紙を取り出して、道路の説明をしながら地図をかいて手渡してくれました。周辺の地理に詳しい様子で、渡された地図に従って二十分ほどで無事にバイパスに戻ることができました。

 作業服姿の男性のお陰で約束の時間に間に合うことができ、大勢の人に迷惑をかけずに済みました。もし夜間だったら、途方にくれて山中を右往左往していたことでしょう。

 ケイ・コッティーさんの場合、海上での案内役はコンピューターに入れたナビゲーションプログラムで、いつも正しい方角を示してくれるものでした。人生において道を決めるのは自分自身しかありませんが、その指針となるのが仏の教えである法華経と、それを具現化した妙見さまです。仏様の声に耳を傾け、最良の道を歩んでいきましょう。