2月の法話 節分の祈り/桑木 信弘

 年末年始を過ぎ世の中の動きも正月気分から通常に戻り、お節料理やお餅、忘新年会の楽しいお酒などで胃袋も肝臓も休みなく働き少々疲れ気味、未だ本調子とは言えない方も多いのではないか。そうこうしているともう二月の到来だ。

 二月の伝統行事といえば節分であり、大寒という一年で最も寒さの厳しい時期の一区切り。それだけに体調も崩しやすい。そして次は立春を迎える旧正月である。

 とは言え春にはまだ程遠い気候だ。朝、本堂で突き刺さるような冷たい空気に思わず震えながらもお経を読む。息は白く手もかじかむ。はっきり言って辛い季節だ。それでも辛さを受け入れつつ神仏に法味を捧げると心身の穢れを祓う爽快感を覚える。

 節分では穢れを祓うお決まりの名文句、「鬼は外福は内」と唱えて豆を撒く。季節の変わり目には鬼が出ると言われ室町時代から続いている行事だ。

 鬼は「隠(おぬ)」が転じた言葉らしく、姿の見えぬこの世ならざるものという意味で、年と季節の変わり目、目には見えぬ邪気、鬼を祓う為、穀物の生命力には魔を除く力があると信じられる豆を撒き、心身の調整をして春に備えた。

 日本人は昔々から目には見えぬ存在、祖先や万物に神々を感じ敬い畏れては、家族や大自然との繋がりを大切に重んじ、その恵みに感謝をしていた。

 食べ物の持つ力が邪気に勝つという考えもそんな考えから出てきているのかもしれない。

 「食」といえば、法華経には「法喜食禅悦食」という一節がある。仏の教えを聞き実践しそれが智恵として身に付き、内面から自然と生じる満ち足りた心の悦楽を意味する。

 二月、節分星祭りのこの時期。暴飲暴食は控え身体を助ける食物を選び、大地に恵みをもたらす星の王様「北極星」の妙見大菩薩様に一心に祈り、蔓延する邪気を退治し、春の活発さに備える心の「食」をしてみては如何だろうか。