5月の法話 金平糖のココロ/小林謙照

 可愛らしいトゲトゲがたくさんあって、風味も色も種類が豊富な大人にも子どもにも人気の食べ物なーんだ?

 正解は、金平糖です。

 娘が先日友達から金平糖をもらって、えらくご機嫌だったので、少し調べてみました。

 金平糖のルーツはポルトガルで、宣教師が織田信長に献上したことがきっかけで日本に広まっていったそうです。とは言っても、製法の難しさから庶民に広まるのはだいぶあとのこと。

 材料はシンプルで、ザラメと糖蜜。銅鑼(どら)と呼ばれる大きな釜で二週間近くかけて作ります。実は金平糖にはレシピがなく、一子相伝の技を天候・釜の温度、角度など見極め、バランスを整えながら、コテ入れ十年、蜜掛け十年、約二十年の修行を経て、一人前になるまで体で覚えていくそうです。

 あの一粒に二十年の技が詰まっていると思うと、軽々しく食べられませんね。

 ひるがえって、お坊さんの世界でも「五十、六十鼻垂れ小僧」と言われたりします。五十歳や六十歳と言えば会社員であればベテラン社員であったり、人によっては定年を迎えるくらいの年齢です。それほど人生経験を積んでもなお仏道修行の道は長いと言うこと。慢心しては行けないぞ、という戒めの言葉なのでしょう。

 さて、日蓮上人の御遺文に「御宮使いを法華経と思し召せ」という一文があります。御宮使いとは仕事や学業、家事などを含めた生活全般を指します。法華経と思し召せ(おぼしめせ)とは、生活を法華経の修行と心得て、法華経を信仰するときの心構えと同じように、普段の生活でも慈悲や感謝の心を込めて精進すれば、それが必ず自身の功徳となるということです。

 金平糖職人が長時間集中し、丹精込めて一粒の金平糖を育て上げるように、私もただ漫然と日々を過ごすのではなく、仏道修行であるという目的意識を持ち、日々精進し菩提心を育てていきたいと思います。