2月の法話 森の仲間たち /倉橋観隆

 ある森に入ったらこんな声が聞こえて来ました。耳を澄ませると杉とタンポポが話をしているではありませんか。たんぽぽが杉に向かって言いました。

「杉さんはいいですね。背がすらーっと高く堂々としてみんなからいつも尊敬されている。それに日もいっぱい浴びられるし、雨も思う存分受けられるもの」

すると杉が答えました。

「何を言っているんだタンポポ君。君の方がよっぽどいいよ。僕なんかいつも日に照らされて暑さを我慢しなきゃならない。君は僕の陰で涼しく過ごせているじゃないか。雨が降れば僕はいつもずぶ濡れ。その点君は雨にほとんど当たらず適当な湿り気。背の高い僕なんか風が吹いたらあっちへ揺られこっちへ揺られ踏ん張って立っているのが大変だよ」

その時、森を支えている地面が言いました。

「杉さん、タンポポ君、君たちはいいよ。俺なんかいつもみんなを支えていなければならないんだから。休む暇なんてないよ」

それを聞いたタンポポがハッとして呟きました。

「そうですよね、杉さんのお陰で可愛い花をいつまでも咲かせていられるんですものね。忘れてました」

杉が答えました。

「そうだ、タンポポ君が根元にいてくれるお陰で、俺の根っこにくっついて液を吸う苦手な虫が寄りつかないんだよなあ」

地面が言いました。

「そうだなあ、みんなが乗っかってくれているから大きな雨でもわしは流されずにいられるんだよなあ」

「みんなありがとう」

 杉も言いました。そしてたんぽぽも言いました。

「みなさん、ありがとう」

そしてみんな笑いました。

「ワッハッハハ…」

相手をいいなあと妬む心からは差別が生まれひいては争いが生まれます。一方相手を理解しようと努めると互いに支え合っていることに気づき、そこから本当の平等が分かりみんなの成長が始まるのではないでしょうか。これが仏様の願いなのです。