コラム 涅槃(ねはん)

 サンスクリット語ニルヴァーナの音写。もとは吹き消すこと、また吹き消した状態を言う。そこから煩悩の炎を吹き消し、迷いのない境地を示す仏教語となった。

 二月十五日が釈尊涅槃会と呼ばれるなど、釈尊の入滅を指す言葉にもなっている。

 涅槃に二種あり、心の迷いは吹き消されても肉体がまだ残っている状態を有(う)余(よ)涅(ね)槃(はん)。心も肉体も完全に滅して煩悩の炎が再び燃えることのない状態を無余涅槃という。

 小乗仏教ではこの無余涅槃を修行者の最終目的としているが、実生活の中での利他の菩薩行を説く大乗仏教はこれを批判している。法華経の自我偈では「衆生を度せんがために方便して涅槃を現ず。しかも実には滅せず」と、釈尊のご入滅は方便だとし、久遠本仏が開顕されている。